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日本酒グラス「唎乃 KiKiNO」

2019年12月1日 at 00:00

日本酒を日本酒らしく飲むためのグラスというのが、あったらいいな、とずっと思っていました。

グラスというのは日本酒にとって家みたいなもので、家があれば、ペアリング時に余計な香味をデザインする必要がないから。全て、そこにビルトインされるから。削ぎ落されることで、よりその酒の個性が見えてくると思ったからです。

そんなことをずっと考えてはいたものの、菅原工芸硝子(sghr)さんに対しては、随分長いこと片思いでした。菅原工芸硝子さんの持つハンドメイド、伝統工芸の技術で、日本酒グラスができたら最高じゃないかと思ってはいましたが、まさか、ご一緒に開発しましょう、と言ってもらえる日が来るなんて!本当に本当に、うれしくて、まだ夢のような気さえします。

 

グラス開発にあたり、まず私に与えられた役割は、俯瞰で見て、日本酒には主にどういう個性があるのか、それをどう生かすべきなのか、を明確にすることでした。
日本酒の個性を生かすために飲み分ける、というコンセプトに沿って、まず日本酒の香味をカテゴライズ、分類し、グラスとして「何種類必要なのか」というところに、かなりの時間を費やしました。

それは例えば、日本の山を分類するのと同じです。
日本にはこういう山があって、だいたい〇種類に分けられるのですよ、と。それが標高なのか、地層なのか、所在地や緯度なのか。富士山は立山と同じグループ、じゃ高尾山は?伊吹山はどこに入るのか?あの山はこの山と同じくくりでいいのか、岩山が雪山になった時はどうするのか?というようなことをひたすら考えて、検証するということです。

結果、日本酒は8種類に分類。その後は菅原さんや職人さんたちと、その8つの山を、どう登るのが最も登りやすく、愉しいのか、という議論を繰り返しました。その日本酒の個性を引き立たせるにはどうすべきか、私たちは九十九里の工房で、夜な夜な話し合いをしました。

とはいえ、日本酒が圧倒的に美味しくなるような独創性や変化を作り出す、ということではありません。目を引くユニークなデザインにしようとか、どうすれば売れるか、といったようなことを考えたり、発言したりする人は誰もいませんでした。

 

私たちは、酒の一定の香味幅の中で、常に適正な調和を維持することができる「必然」の形、日本酒をいかす機能を備えた、汎用性のある形状について考え続けました。
その工程で、菅原工芸硝子の職人さんたちは、嫌な顔一つせずに、(むしろ嬉しそうだった気が・汗)何度もトライアンドエラーを繰り返してくれました。全ての路地をしらみつぶしに歩いてみるように、こちらが提案していない形状まで、作りこんでは“違う”ということまでも、確認をさせてくれたのです。

だからこそ、できあがった「唎乃」は、山の頂上に登る瞬間に、なんとなくつかんでしまう枝のような、頂上で景色を見るときに、ついもたれてしまう岩のようなグラスになったのです。唎乃という「必然」の形状を探し出すには、開発メンバーの誰が欠けても、絶対に駄目だっただろうと思います。

私が伝えたいことは、「唎乃」は、日本の生活や文化を背景につくられたグラスで、世界的に優れた機能を有しているとともに、日本人の心に触れる、美しい「必然」を形にしたグラスだということです。
そしてそれは、生活の中で使用されることで、日本酒だけでなく、周囲の空気や、使う人の心をも、適正に調和させることになるだろうと確信しています。

本日より、発売です。
皆様、どうか「唎乃」をよろしくお願いいたします。

菅原工芸硝子株式会社WebSite
http://www.sugahara.com/

追記
唎乃の開発パートナーに加えていただいたことを誇りに思っています。弱音を吐いたりしたこともありましたが、「必然」でなければならないのだと、鼓舞してくださった開発チームの皆様、ご多忙の中ご協力下さった方々に、心からお礼を申し上げます。ありがとうございました!!

 

 

-Special Thanks-

SUGAHARA GLASSWORKS INC.
Yusuke Sugahara
Kayoko Sugahara
Kenji Matsuura
Toru Era

Matsuzaki Co., Ltd.
Yudai Matsuzaki

Yasumitsu Hayashi

Directed by
Sake’s Kitchen
Junko Tanaka

 


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