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半蔵・大田酒造(三重県伊賀市)

2020年2月10日 at 17:43

先日は三重県・食の生産者の集い「伝味の会」の新年会で、伊賀市で「半蔵」を醸す大田酒造さんの新酒をいただきました。

ご子息が戻り新杜氏として醸す酒はどうなのか?
と、僭越ながらピリッとした空気の中で頂戴しました。

新酒らしいジューシー感は残しつつ、若渋や棘がなく、柔らかい。
あぁ綺麗だなぁ、と。

そしてその酒は・・・
奪い合いになり、あっという間に枯渇(笑)
※私だけが飲んだのではございませんよ、念のため。

あまりに印象に残ったので、ご無理をいい、翌日は蔵を見学。

蔵人の吉永かおりさんにご案内いただきました。

ちひろ専務にコメントを求められて、思わず「綺麗な旨味」と言おうと思ったんですが、ふと、綺麗というのはbeautifulという意味もあるし、cleanという意味もあるし・・・この味わいを表現するのは難しいなぁと。

それは、私が美しいとか綺麗とかいう表現を、常に考え続けている職業(テイスター)なので、どうしても考えてしまうのですが、果たして私が今表現しようとした綺麗さというのは、京都の雅のような美しさを言っているのか、それとも塵一つなく整えられているという意味の美しさを言っているのか、よく分からず、一瞬考え込んでしまいました。
何故なら、それらが全部あるから。

大田酒造さんは昔から高い酒質レベルを維持していますが、昨今の経済状況を考えるとすれば本来は、どこかで手を抜くとか、裏で見えない部分で人を減らすとかいうことになりますよね。
でもそんな気配は有輝杜氏からは微塵も感じられず、それどころか新しい設備が複数投入され、手間も人員も増えていました。(製造量は横這いなのに、です)

では、何がそうさせているのか?
宗教なのか?
御食つ国に引き継がれた神道なのか?
それとも私が大好きな武士道なのか?
色々聞いたり考えたりしても、分からないのです。

それは、おそらく大田家の教育の中で特別に訓練したり、“高い酒質レベルを求めながらも、粛々と生活しなければいけませんよ”と教えているわけではなくて、自然に今の次世代(有輝杜氏)に受け継がれていったのでしょう。
実際、有輝杜氏に直接『何故継ごうと思われたんですか?』と聞いても、ご本人もよく分かっていない様子でしたし、ちひろ専務も『継いでくれとお願いしたことはない』そうです。

とはいえ、なんというか「きちっとしてる」「ちゃんとやり抜く」みたいなことを誇りにしている人たちがつくらないと出せない香味の領域というのがあると思っていて、大田酒造さんの立ち位置というのは、新しさとか、インパクトの強さというよりも、きちんと美しさを追求する、というポジションなんだろうなと。

あまりディスって比較はしたくありませんが、味が落ちてても知ったことではないので目立てばいいとか、とにかく有名な人にPRしてもらおうとかいうところもある。しかし大田酒造にはそういう発想自体がない。(まさにサミット後に在庫一斉放出事件もそう。特約店に絞って小出しにすればいいのに!と業界人は皆思ったはず、ですよね。)
大好きな柔道に例えると(毎度例えすぎですがw)、海外で評価されたいからただ勝つんじゃなくて、難しくても一本背負いを狙うのが最も美しいんだ、というような、極めて日本らしい味わい。(そこは影の軍団 服部半蔵w)

それは確実に香味に反映されるので、目に見えないかもしれないけども、直輝杜氏の話の中に垣間見えるものづくりの精神や、酒米・神の穂を一から育てて醸すという志だったり、蔵人や関わる人たちの優しさだったりを、「綺麗」という表現で、言ってもいいと私は思いました。美しい香り、綺麗な旨味というふうに、言ってもいいと。

最近海外のお客様を蔵にアテンドする機会が増えてきて、こうした説明のつかないstrangeな実直さというのは、実は海外からみると、とてもとても、素敵な感じがするのだということが分かってきました。

だから大田酒造さんのような奇妙で不可思議でstrangeなつくり手の酒を、私たち提供者がどうやって魅せてくか、ということが今後の日本酒PRや酒蔵観光にとって、結構重要なファクターなんじゃないかな、と思ったりするわけです。

法被着て、和太鼓叩いて、折り鶴折って、鮨を食わせるという押しつけ気味のPRもいいんですが、初見の驚きというのは、結局興味がスッと下がります。それよりも、「なんて実直なんだ。なんてちゃんとしてるんだ。」というようなところが、じわじわと興味のレベルを上げて、結局はウケけるんじゃないかなと。

そこを地域性としてさらに突き詰めると、やっぱり御食つ国らしいよね、三重らしいよね、というところに繋げられるんじゃないかな?というのが私の考えです。

というようなことで、今後さらに綺麗な酒になり、御食つ国三重を象徴するような酒として、有輝杜氏率いる「半蔵」は、認知されていくんだろうなぁと思います。
そして、益々有名になったとしても、彼らは前に出ず、粛々とお酒を醸し、できあがりを嬉しそうに話してくれるんだろうなぁと。

お忙しい時期に見学させて下さりありがとうございました!

Special Thanks
Chihiro Ota
Yuki Ota
Kaori Yoshinaga


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